みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

国家の思想(戦後日本思想大系5)

戦後日本思想大系という全16巻の シリーズの第5巻、「国家の思想」。

 

 

これは書下ろしではなくて、当時いろいろなところに出ていたいろいろな人の論説で、紹介すべきと編者(編集・解説)が判断したものを集めたオムニバス形式の本です。

第5巻は、かの吉本隆明が編集解説を務めただけあって面白い気がする。

他の巻は1,2冊をちらっと読んだ程度なので、他も面白いのかもしれませんけどね。

「国家の思想」だけあって、日本史・天皇制・戦争に関する記述が多いです。

中でも個人的に興味をひかれたのは故・上山春平氏京都大学名誉教授)の「大東亜戦争の思想史的意味」。

戦中世代ならではの(元特攻隊員だったそうです)、新憲法が所与の前提ではない、その一方で復古的な保守派に対してはもっと厳しい見方をしているという、ちょうど良い感じの憲法に対する考え方を示している感じです。

 

温故知新、大事ですよね。

1960年代の本だけあって、戦争がそんな遠い昔ではないんですよ。遠い昔の悲「劇」でもないというか、とにかく現実に起こって、現実に負けて、現実に多くの犠牲者が出たんだから仕方ないじゃない、それが前提、というような、単に戦争は嫌だというだけの感情論ではない何となくの割り切りも伝わってきて、やっぱりこういう戦後の感覚を、完全に共有はできないにしても、学ぶのは大事なことだなあと思うわけです。