中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』
今じゃあんまり高い値段で売れないだろうなあ…。
これ当時けっこう衝撃の本なんですよ。
中谷巌氏は、経済学の教科書の第一人者で、『痛快!経済学』なんてわかりやすい本も書いてて、竹中平蔵氏と同じく小泉改革を後押ししたグローバル自由主義の経済学者だった人なのです(受け売り知識ですが)。
ところがこの本では一転してグローバル自由主義は「モンスター」でありそれを追求したのは間違いだったと。リーマン・ショックでそれがわかったと。
それで前半の、リーマン・ショックやアメリカの経済の崩壊について分析しているところはいいんですが、中盤あたりからキューバ(社会主義国)を礼賛するような記述を始める。それも経済的に折り合ってるという分析的な理由からではなく「牧歌的」で「人々が陽気で明るい」から、と。
それで読者が「え?」ってなるところに、さらに日本は多神教で外国は一神教だからとか、中途半端な文化人類学めいた考察が始まってしまう。
そのせいで完璧な「奇書」扱いです。「自壊したのは中谷巌氏だ」と批判した人もいたらしい。
法学で言えば民法の内田貴氏が「やっぱ改正やめるわ。アメリカ法は駄目だわ。ドイツ民法最高」と言い出すくらいの衝撃度です。
たしかに、「転向」するのはいいんですけど、経済学者なら経済学者としてきちんと、なぜグローバル資本主義が駄目で、キューバやブータンのような後進的とされている国のほうが良いのか、しっかり書かないと駄目ですよね。経済素人の自分でもそう思うんだから、経済学を学んだ人ならなおさらでしょうね。
ですので、面白いかどうかと言えば面白いです。
中谷巌氏はその後は目立った本出してないんですよね…。干されちゃったのかなあ。