お、刀城言耶シリーズの最新作、と思って最近購入して読んでました、『碆霊の如き祀るもの』(はえだまのごときまつるもの)。
もう表紙からして怖いですけどね。ホラー本格推理。
でも、今回はイマイチですね。
怖いのは最初の4つの怪談(のちに事件の鍵となる)だけで、その後の本編が全然怖くない。
原因は、ワトソン役兼ヒロイン役の女性記者、祖父江偲(そふえ・しの)ですね。
犀川助教授に対する西之園萌絵みたいな役回りなんですけど、刀城言耶と祖父江偲の下手なラブコメみたいなやり取りが一々冗長すぎて、この刀城言耶シリーズが本来有していた、ひそやかな恐怖感がかなり台無しになってます。本編最初の山歩きシーンで一度挫折しました。
刀城言耶シリーズは、一応昭和の、まだインターネットもストリートビューもない、山奥に地図にない村なんかが残ってそうな時代の物語ということなんですが、祖父江偲の話し方や思考様式が現代風過ぎて台無しなのです。
犀川助教授に対する西之園萌絵は、ワガママなところもありますが基本賢くて話の流れを邪魔しない程度なので気にならないのですが、祖父江偲は…。
前にもどっかで書いたかもしれませんが、シリーズ1作目「厭魅の如き憑くもの」の頃は本当に怖かったんですよ。
それが変なヒロインの登場で台無しという…。
あと、推理部分も…。
悪くはないんですけど、見取り図付けてほしい。特に物見櫓の件は文字だけでは何のことやらわからなくてさっぱりでした。
(追記)
いろいろ考えてみて、西之園萌絵との違いは、主役(探偵)の仕事に対するリスペクトかなと思いますね。西之園萌絵は犀川の理系のよくわからない話でも一応きちんと聴く(読者としても何かの伏線になるのかと思って読む)けど、祖父江偲は言耶の怪異の話そっちのけで言耶とラブコメ的な痴話喧嘩を始めてしまうところもあって、けっきょく言耶の語る怪異の話…つまり読者としては(伏線になるかもしれない)一番読みたい話を脇に追いやってしまうところがあるので、読んでいてとてもイライラするわけです。
Amazonレビューでも祖父江偲がダメだったって同じ意見が複数あったので自分だけじゃないんだと思ってちょっと安心しました。