浅羽通明氏が各大学の講義に潜り込んで、面白い講義を紹介する『ニセ学生マニュアル』の第3弾にして最終作、『ニセ学生マニュアル 死闘編』。
1990年10月発売です。
本作は、浅羽氏の著作(全部は読んでませんが)において、おそらくは、けっこう大きな転機になっているような気がします。
元祖『ニセ学生マニュアル』に感化された真面目なガリ勉学生を「知のオタク」としてむしろ突き放すような内容になっています。ものすごく要約すれば、「難しいことを勉強してるから偉い、みたいに錯覚するなよ」ってことですね。
その後の『大学で何を学ぶか』に通ずるものがあります。

ニセ学生マニュアル〈死闘篇〉知的スノビズムを超えるための気になる講義総覧
- 作者: 浅羽通明
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1990/10
- メディア: 単行本
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この本、当時の世相に対する風刺も多分に含まれてるので復刻してほしいなあとは思いますが、〇波大のとある教授に関する説明文だけは改訂が必要でしょうね…。
一部白塗りしてどんなことが書いてあるか引用すると
「結局、何も起こらなかった〇〇〇〇〇〇『〇〇〇〇』(〇〇〇〇)〇〇を訳した人。その勇気よりもお話自体は凡庸で退屈な大長編、しかも問題の個所がなぜそんなにヤバいのかはイスラム学の相当の専門家でなければわからないという代物(中略)。現代思想特講ではブルガリア文化を扱い、演習ではウィトゲンシュタインやフレーゲの記号論理学を用いてプラトンの原典講読をやり、大正大では古代中世の哲学史をオリエント、イスラムを交えつつ語る。(中略)アラブに関して何ら手を汚していない日本は、石油などいらないとつっぱり、秋篠宮夫妻の新婚旅行を兼ねた平和の船を出せ、私が指導教授・参謀総長として学生を率いて乗り込む、と豪語する講演を〇波大でぶち上げバカうけしたとか」
これ同年代以上で平成事件史とかに興味ある人なら、大体わかりますよね。
この『ニセ学生マニュアル 死闘編』が出たのは1990年、当時はたしかに何もなかったんでしょうね。でも、この後…。
本当に怖いですね。
事件の話ばっかりが後世の人間の印象に残りがちなので、このように生前の学者としての人柄や学問の内容がしっかり記録されているのは貴重だと思います。