旧版(下の画像)の表紙はイマイチですが新装版の表紙はシンプルでかっこいいです、有栖川有栖『ダリの繭』。
火村&有栖シリーズの長編ではありますが、国名シリーズではないです。
基本的に国名シリーズは講談社で、それ以外は角川書店等々のようです。
前に読んだ『海のある奈良に死す』はイマイチだったので、これはどうかな、と思いつつ読んでみましたが、なかなか良かったです。
平成5年の作品ですが古さはあまり感じません。
テーマはタイトル通りの「繭」、現代人にとっての心の「逃げ場」ですね。
現実世界の喧騒に煩わされず逃避できる場所。
探偵役、火村助教授が「オタク」文化について解説するくだりがありますが、ここの解説は今でも通用すると思います。
年代的には割と初期作品のはずですが、人間心理の描写の細かさと親しみやすさは、さすがの有栖川有栖ブランドという感じですね。