クトゥルー神話の短編集です。
とりあえず「異次元の色彩(宇宙からの色)」と「ダンウィッチの怪」は読みました。
短いながらも文章の密度が濃いというかボリュームはあるので、またしばらくしたら次も読むかもしれないけど。
「異次元の色彩」は、現代の怪談話とかにも同じパターンがありそうなホラーの王道ですが、よく考えたらホラーの王道を作ったのがクトゥルフなのかもしれません。
「ダンウィッチの怪」は、今読むとちょっと差別的な(?)ところもあるかもしれないけど(人間と恐ろしいものとの交配によってより恐ろしい存在が生まれるような話なので、何というか優生学の気配はある)、まあ、アメリカの広々として明るいイメージとは対極の陰湿な閉鎖性があって興味深くはある。
今はそんなにクトゥルー流行ってない(テーブルトークRPGくらいですかね)けど、ネクロノミコンとかルルイエ異本とかが昭和のオタク少年たちの心をとらえた理由は何となくわかるなあ、と。
何といっても魔道書なわけです。
というとよくわからないかもしれないけど。
どんなに人づきあいが下手で、見た目が良くなくて、変な趣味があっても、魔道書一冊で人の世を大混乱に陥れることができるわけですから。
その意味で「ダンウィッチの怪」はある種の復讐譚という気もする。
今やホラーではありがちなパターンですけど、要するに、バカにした、避けて通った、いじめた、見て見ぬふりをした、そんな連中への復讐…。
クトゥルーの魅力はもちろんそれだけじゃないと思います(ファンの方には何かすみません)けど、一見冴えない嫌われ者が大抵ものすごい力を持ってるってのは、スカッとする面もあったのかなと。
令和の、ネットで匿名叩きしてるよりはクトゥルー読んで夢想してるほうがよほど健全なような気もします。