この作家さんのミステリを読むのは『十三回忌』『厄殺のロンド』に続いて三作目です、『武家屋敷の殺人』
そんなにファンってわけじゃないけど何となく。
まあでもやっぱりー…。イマイチでしたね。
相変わらず偉そうですけど。ほならね自分で書いてみろって言われたら書けませんけどね。
この作家さんの作品の傾向が大体わかってきたんですけど、横溝正史風の舞台設定に大仕掛けな謎が多い割には、トリックがチマチマしてて、しかも一気に解けないんですよ。その内容も、「え、そんな偶然に頼っちゃう感じなの?」というところもあって。今回のトリックなんかは5回やったら4回は失敗しそうな感じ。
メインのトリックで「なるほど、だまされたあぁ!」というのが良いんですけどね。
ただ、この作家さん、もしかしたら法律・法務関係の仕事をしてる方なのかなと本作を見てて思いました。
不動産法務関係とか、あるいは警察とか…。ただ警察官の描写はだいぶ薄味なので(警察にいた経験があるならもっと具体的に書けるはず)、前者じゃないかなと思いますけどね。少なくとも法学部出身者で民法を勉強したことがあって、実際にそれに関連する職業に就いたことのある方なんじゃないかと思います(書士さんとか)。
なぜかというと、物理的なところでそんなトリックで行けるのか?というところの詰めが今一つ弱い(ついでに言えば物理トリックの場合でも建物構造とか見取り図が作品中にないからわかりづらい)のに比べて、賃貸借契約がどうとか、そういうところには意外と細かいんですよ。
例えば文庫版の289頁にはアパートの建て替えは会社が仕切っているけど所有名義は個人、みたいな説明が出てきますし、文庫版423頁には「賃貸借契約は二年に一度更新するから」というフレーズが出てくるのですが、普段から勉強または仕事した経験がないと、こういう説明やフレーズを入れようとすら思わないと思うんですよね。
読者だってアパートの所有者が法人か個人かなんてあまり気にしないし、借家の賃貸借契約の更新についても気にしながら読んでる人なんてあんまりいないんじゃないかなと思うところですが。
現実離れした設定の割に、法律的にはやけに細かいところにこだわるというのはやっぱり、もと法律・法務関係の方っぽいなあと思いますけどね。