みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

東京五輪2020 女子バド・シングルス 奥原選手の準々決勝敗退(7.30)

マスコミ的にはメダル取れなかった競技はなかったことになってるみたいですけど(そのくせ金メダルを取ると普段は報道すらしてないようなマイナースポーツでもちやほや報道し始めるのはほんと嫌い)、敗因分析は大事です。敗北から得られる教訓は選手じゃなくても大きい。

というわけで、7月30日にシングルスで敗退した奥原希望選手の試合。

 

バドミントンの競技日程・スケジュール | 東京2020オリンピック | NHK

 

この試合、途中までは中国の選手(ヘ・ビンジャオ)に勝つ流れなんですよね。

でも負けてる。

 

動画全部見ましたけど、まあ運が悪かったってのはあります。奥原のショットが決まってほしいところでアウトになり、ヘ・ビンジャオのショットは際どい所で幸運にもインになっている。運の良し悪しの差はあったと思います。

 

ただ、運の良し悪し以外にも敗因はあって、苦手パターンを読まれていて、試合中に対応しきれなくなってたところですね。

徹底的に狙われたのは奥原から見てコート左前方面。

ここに速めのカットドロップを落とされて、返せてない場面が2ゲーム目以降、何度もあります。

単発で狙っても奥原はそこまで崩れてないんですが、奥原をいったんコート右後ろに下がらせてからコート左前にカットドロップのような弱い球を落とすと、かなりの確率で奥原がミスってます。

1ゲーム目はまだそれほど目立たないんですけど。

 

2ゲーム目だと

0 - 2 からのラリーではうまく行かないんですが

2 - 2 からのラリーでは単純なバックハンドを奥原がミス。

そこから、

2 - 3 からのラリー

5 - 10 からのラリー

8 - 13 からのラリー

10 - 17 からのラリー

13 - 19 からのラリー

少なくとも5本がほぼ同じパターンで決まってます。

 

まあ、そこはさすがの奥原の腕前で、3ゲーム目では最初はそのパターンに持ち込ませず奥原がリードして「あ、奥原が勝つかな?」と思わせるんですが、そこでヘ・ビンジャオがまたもや必勝パターンを繰り返してくるわけです。

9 ‐ 5 からのラリー

10 ‐ 7 からのラリー

10 ‐ 8 からのラリー

同じ必勝パターンで、じわじわと差を詰めます。

 

10 - 9 からのラリーでは焦った奥原がいきなりスマッシュしてミス。

10 - 10 からのラリーでは奥原が動揺したのか2連続のミス。

逆転されてインターバルという、奥原にとってはメンタル的にも不利な展開。

 

ここから、ヘ・ビンジャオの怒涛の攻めが始まります。

11 - 11 からのラリー

12 - 12 からのラリーではパターンは決まらないけど奥原のミスを誘い、

12 - 13 からのラリー

12 - 14 からのラリー

で、ほぼ4連続に近いポイントを取る。

ここで流れをつかんでリードを広げます。

途中からヘ・ビンジャオが精神的余裕を持ったのかだんだんとニヤニヤしてくるんですが(笑)、あからさまに狙うと対策されるから、たまに織り交ぜていく感じ。

例えば12-16 からのラリーでは、結果ミスってますが必勝パターンから少し変化をつけようとして、「そう何度も同じ手は使わないよ」ってところを見せてる。

見た目は何かぬぼ~っとしてるようで(失礼)、冷静で頭も良いプレイヤーだと思います。

 

次にすごいのは13 - 17 からのラリー。奥原が、おそらくは、また必勝パターン(右後→左前)来るかと思って少し右側に動く意識を見せてるところで、奥原の左側に素晴らしいスマッシュ。奥原は振ることもできずに見送り、インになったのを見届けてから立ち尽くしてます。ヘ・ビンジャオは笑顔のガッツポーズ。

続く13 - 18 からのラリーでは逆に、コート右側に強烈にスマッシュ。もう奥原は足がついてってなくて、少しコートにへたり込んでます。勝負ありという感じでした。あと2点で負ける状況下で7点取り返すって難しいですからね。

 

13 - 19 からのラリーでは右後ろに来た甘い球を奥原が強烈にスマッシュして一矢報いる。これが、必勝パターンを狙われ始めた段階でできてたら(好調ならできてたかも)試合の流れは変わってたかもしれません。

しかし続く14 - 19 からのラリーは長期戦の末に奥原が正面のレシーブミス。この時にヘ・ビンジャオが珍しく「シャアー」と勝ち鬨を上げています。もう勝利を確信してる感じですね。

そして最後は例の必勝パターン。

最後は見つけた勝ちパターンで決めるあたりにヘ・ビンジャオの美学を感じます。

 

ヘ・ビンジャオは次の準決勝で負けて、3位決定戦でも負けていますし、奥原とヘ・ビンジャオの戦績では奥原が大きく勝ち越しているので、本来負ける勝負ではなかったはずなんですよね。

ネットに転がってる過去の対戦動画もちょこっとだけ見てみたんですけど(権利的には微妙)、やっぱり今回と同じ必勝パターンで有利を取ってる時がありますね。ただ、ヘ・ビンジャオが肝心の詰めを誤ったりしていた(浮いた球を叩こうとしてアウトするとか)ので、奥原が勝ってきたのかなと思います。

今回はたまたま幸運だったヘ・ビンジャオが必勝パターンを基軸に勢いに乗って勝利という感じでしょうか。

やっぱりワールドクラスの選手なので研究もされるし、弱点を放置してたら、いつかは負けるということなのかなと思います。