みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

東京五輪2020 女子バド・シングルス 奥原選手の準々決勝敗退(7.30)

マスコミ的にはメダル取れなかった競技はなかったことになってるみたいですけど(そのくせ金メダルを取ると普段は報道すらしてないようなマイナースポーツでもちやほや報道し始めるのはほんと嫌い)、敗因分析は大事です。敗北から得られる教訓は選手じゃなくても大きい。

というわけで、7月30日にシングルスで敗退した奥原希望選手の試合。

 

この試合、途中までは中国の選手(ヘ・ビンジャオ)に勝つ流れなんですよね。

でも負けてる。

 

(公式動画が消えてたので別動画)

https://www.youtube.com/watch?v=PWoeVxSheAw

 

動画全部見ましたけど、まあ運が悪かったってのはあります。奥原のショットが決まってほしいところでアウトになり、ヘ・ビンジャオのショットは際どい所で幸運にもインになっている。運の良し悪しの差はあったと思います。

 

ただ、運の良し悪し以外にも敗因はあって、苦手パターンを読まれていて、試合中に対応しきれなくなってたところですね(2024.6 追記:あと、後年の奥原希望選手の試合見ると、なんか妙にオリンピックの時はフットワークが重いので、なんか調整しきれない事情があったのかなとも)。

 

試合後半から徹底的に狙われたのは奥原から見てコート左前方面。

ここに速めのドロップを落とされて、返せてない場面が2ゲーム目以降、何度もあります。

単発で狙っても奥原はそこまで崩れてないんですが、奥原をいったんコート右後ろに下がらせてからコート左前にカットドロップのような弱い球を落とすと、かなりの確率で奥原がミスってます(過去の負傷のせいもあるかな)。

1ゲーム目はまだそれほど目立たないんですけど。

 

2ゲーム目だと

0 - 2 からのラリーではうまく行かないんですが

2 - 2 からのラリーでは単純なバックハンドを奥原がミス。

そこから、

2 - 3 からのラリー

5 - 10 からのラリー

8 - 13 からのラリー

10 - 17 からのラリー

13 - 19 からのラリー

少なくとも5本がほぼ似たようなパターンで決まってます。

 

まあ、そこはさすがの奥原で、3ゲーム目では最初はそのパターンに持ち込ませずリードして「あ、奥原が勝つかな?」と思わせるんですが、そこでヘ・ビンジャオがまたもやパターンを繰り返してくるわけです。

9 ‐ 5 からのラリー

10 ‐ 7 からのラリー

10 ‐ 8 からのラリー

同じパターンで、じわじわと差を詰めます。

 

10 - 10 からのラリーでは動揺したのかあっさりミス。

逆転されてインターバルという、奥原にとってはメンタル的にも不利な展開。

 

ここから、ヘ・ビンジャオの怒涛の攻めが始まります。

11 - 11 からのラリー

12 - 12 からのラリーではパターンは決まらないけど奥原のミスを誘い、

12 - 13 からのラリー

12 - 14 からのラリー

で、ほぼ4連続に近いポイントを取る。

ここで流れをつかんでリードを広げます。

途中からヘ・ビンジャオが精神的余裕を持ったのかだんだんとニヤニヤしてくるんですが、あからさまに狙うと対策されるから、たまに織り交ぜていく感じ。

例えば12-16 からのラリーでは、結果ミスってますがパターンから少し変化をつけようて、「そう何度も同じ手は使わないよ」ってところを見せてる。

見た目は何かぬぼ~っとしてるようで(失礼)、冷静なプレイヤーだと思います。

 

次にすごいのは13 - 17 からのラリー。奥原が、おそらくは、少し右側かあるいは前めかに動く意識を見せてるところで、奥原の左奥に素晴らしいスマッシュ。奥原は振ることもできずに見送り、インになったのを見届けてから立ち尽くしてます。ヘ・ビンジャオは笑顔のガッツポーズ。

続く13 - 18 からのラリーでは逆に、コート右側に強烈にスマッシュ。もう奥原は足がついてってなくて、少しコートにへたり込んでます。勝負ありという感じでした。あと2点で負ける状況下で7点取り返すって難しいですからね。

 

13 - 19 からのラリーでは右後ろに来た甘い球を奥原が強烈にスマッシュして一矢報いる。これがで好調なら試合の流れは変わってたかもしれません。

しかし続く14 - 19 からのラリーは長期戦の末に奥原が正面のレシーブミス。この時にヘ・ビンジャオが珍しく「シャアー」と勝ち鬨を上げています。もう勝利を確信してる感じですね。

そして最後は例の必勝パターン。

 

ヘ・ビンジャオは次の準決勝で負けて、3位決定戦でも負けていますし、奥原とヘ・ビンジャオの戦績では奥原が大きく勝ち越しているので、本来負ける勝負ではなかったはずなんですよね。

今回はたまたま幸運だったヘ・ビンジャオが必勝パターンを基軸に勢いに乗って勝利という感じでしょうか。

やっぱり奥原希望もワールドクラスの選手なので研究もされるし、いつかは負けるということなのかなと思います。

 

追記(2024.6.3)

3年後の2024年シンガポールオープン。奥原希望選手とヘ・ビンジャオ選手が再戦しています。nozomi okuhara vs he bing jiao で検索できるはず。ネタバレは伏せますが、奥原希望選手はオリンピックの時よりずっと動きが良くなってて、勝敗は置くとして素晴らしい試合内容でした。パリ五輪に出られないのがとても残念です。