みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

ラブイユーズ

まだ全部読み切ってはいない(というか序盤)ですけど、この光文社古典新訳文庫版『ラブイユーズ』(La Rabouilleuse)は、冒頭に通貨価値に関する説明があります。

 

 

 

 

『ラブイユーズ』の著者、フランスのバルザック(1799‐1850)は19世紀前半、つまりフランス革命(1789)が何やかやあってナポレオンが出てきてワーテルローの戦いを最後に没落して(1815)、みたいな時代に育ち、その後、不倫したり出版事業に失敗して破産したりしつつも成功を収めるみたいな、割と破天荒な人生を過ごした人です。

 

そんなふうに金に苦労した体験からかどうかわかりませんが、没落した貧乏貴族の末裔であるラスティニャックが社交界を目指す『ゴリオ爺さん』(1835)にも、革命とナポレオン戦争による世情の激動に巻き込まれて没落した家族を皮肉を交えて喜劇的に描くこの『ラブイユーズ』(1842)にも、何フランで家財を売り買いした、みたいな記述が盛んに出てくるのです。

 

でも、じゃあ、当時のフランスの1フランは現在の通貨価値でどのくらい?となりますよね。

 

前置きのほうが長くなりましたが『ラブイユーズ』の冒頭には、その記述がしっかり出てきます。訳者の國分俊宏氏(青山学院大学教授)の功績ですね。

ただ翻訳するだけではなくて、現代の日本人にも小説の面白みがより伝わるようにするためのこういう工夫は、とても良いと思います。