今や推理小説の大御所となられた、有栖川有栖先生の新作、デビュー30周年作品にして国名シリーズ第11作『日本扇の謎』。
国名シリーズ第1作『ロシア紅茶の謎』から始まって、ついに日本来たか〜、という感じですね。
内容的にも、国名シリーズに一区切りつけようとしているのか、総集編的な過去回想が多い。
導入部が、やや長く刺激も少ないので、なんか往時の勢いがないなあ、有栖川有栖先生もお年かな…などと、超失礼な感想を抱きながら読んでいましたが(別の作家先生ですが『鵺の碑』が微妙だったので…つい)、途中からだんだん面白さが増し、止まらなくなりました。
個人的には、全部の謎が完璧に回収されたとまではいかない気がしており、少しだけ不満でした。ただ、今回も本格推理+ヒューマンドラマという感じで、事件やトリックだけでなく一人一人の人生を描き出す手法が徹底しており、最後まで面白く読めました。
第9作『インド倶楽部の謎』は雰囲気良かったけど本格推理ではないし、第10作『カナダ金貨の謎』は特に最後の短編がイマイチすぎたので、何か11作目にして日本、そして有栖川有栖先生の国名シリーズが復調した!というのは、嬉しい気分になります。
ただ、これで打ち止めではなく、12作目が読みたいですね。