みちのく砂丘Ⅱ

仕事とあまり関係ないことについて書きます。

江神二郎の洞察

単行本は2012年発売だったのですが、なぜか10年近く積んでました。

有栖川有栖の江神二郎シリーズ短編集『江神二郎の洞察』。

 

有栖川有栖の小説は、有栖川有栖(作家と同名のワトソン役)が学生の時代を描いた江神二郎シリーズと、社会人(作家)になった後を描いた火村英生シリーズに分かれてます。

二つの作品世界は別々なのですが、何となく共通している面もあったりはする。

 

 

本作は、時系列的には第1作『月光ゲーム』と第2作『孤島パズル』の間くらいなのですが、推理要素もさることながら、各短編のそこかしこに、時代が昭和から平成に移り変わる時代の世相や、ミステリ評論みたいなことが結構書かれてます。

何となくですけど、本作をもって江神二郎シリーズに一つの区切りをつける感じに見えます。

なので、本作だけ購入してもあんまり面白くないかもしれないですね。

 

江神二郎シリーズの中では、というか今まで読んだ有栖川有栖作品全作品の中でも第2作の『孤島パズル』が一番好きかな。

 

 

1989年の小説ですが、推理部分がしっかりしてる上に、作者自身が若いころの小説だけあって、青春の雰囲気というか透明感がとても良いです。事件の謎のほかに、孤島に眠る時価数億円のダイヤモンド、という、当時終焉しつつあったバブル時代を想起させるキラキラした感じがあるのも良い。

 

江神二郎シリーズの中で世間的な評判が一番高いのはおそらく第3作の『双頭の悪魔』で、たしかに面白いのですが、けっこう重厚な推理小説なので、コンパクトにまとまっている『孤島パズル』のほうが個人的には好きですね。