みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

パルムの僧院 その3

スタンダール『パルムの僧院』。新潮文庫の上巻の再読が終わりました。

飛ばし読みだといまいち面白さがわかりませんでしたが、じっくり読みなおしてみて、ようやく各登場人物の個性がわかりました。

「ジーナ=ピエトラネーラ伯爵夫人=サンセヴェリーナ公爵夫人」

であることがわかるまでだいぶ苦労しました(読解力が…)。

 

 

上巻後半は物語の密度が高く、登場人物が一気に増えるので混乱します。

今回は上巻後半のまとめ。

 

エルネスト4世(大公)

タイトルにもあるパルム(イタリアの小国家。架空)の絶対君主。気まぐれなうえに猜疑心が強く、またわがままで好色な性格だが、馬鹿ではない。敵が多く、モスカ伯爵以外にはあまり信を置いていない。

 

モスカ伯爵

パルムの宰相。エルネスト4世に信頼されておりパルムでは実質的な権力を握っている。有能で、50代と壮年ではあるが、年下(30代くらい)のジーナに深く恋し、上巻後半では事実婚のような状態となる。不仲な妻と別居中であり大っぴらに結婚できない。主人公ファブリスに対してはジーナと同じく理解者的な立場でアドバイスもするが、ジーナの中では「ファブリス>>>モスカ伯爵」なので、ファブリスに対する嫉妬心から、ファブリスを亡き者とすることすらも考えてしまう。

 

ジーナ(=ピエトラネーラ伯爵夫人=サンセヴェリーナ公爵夫人)

前半から登場している、ピエトラネーラ伯爵(プロローグで暗殺された)の未亡人であり、ファブリスの最大の理解者。上巻後半では、モスカ伯爵に見初められ、形式的にはサンセヴェリーナ公爵と再婚し、実質的にはモスカ伯爵と夫婦に近い状態となる。ただ、相変わらずファブリスLOVEが行き過ぎていて、モスカ伯爵からは嫉妬される。物語の途中で「ピエトラネーラ伯爵夫人」から「サンセヴェリーナ公爵夫人」に呼称が突然変わるので注意が必要。

 

サンセヴェリーナ公爵

パルムの、70歳近い温厚な老人貴族。ジーナの形式上の夫だが、勲章のためにジーナを形式上の妻に迎えただけである。ジーナとしてもモスカ伯爵の近くにいるために結婚しただけであり、相互にメリットのある偽装婚であった。ほとんど物語には絡まない。

 

ラヴェルシ侯爵夫人

パルムの貴族の夫人で、モスカ伯爵の最大の敵。直接登場することはないが、様々な手段でモスカ伯爵を陥れ、権力を奪い取ろうとする。主人公ファブリス(モスカ伯爵の事実上の妻であるジーナの弟…ややこしい)の無鉄砲な行動の数々を、モスカ伯爵失脚のための活動に利用しようと日々企んでいる。

 

マリエッタ

ファブリスと偶然知り合うことになった、旅芸人の娘。定住先を持たないことから、町人のような庶民よりも下に位置する下層民と見て良いかも。ファブリスと一時的に恋愛関係になるが、ファブリスも大概浮気な性格なのであまり長続きしない。旅芸人一座のリーダーであるジレッチという男に囲われている。

 

ロドヴィゴ

サンセヴェリーナ公爵の従僕だった男。マリエッタをめぐってジレッチと大きなトラブルになってしまったファブリスを逃がすために、日本でいう忍者的なポジションで、様々な手を尽くしてくれる。腕もそこそこ立つ。

 

ファウスタ

上巻の終盤で唐突に登場する歌姫。主人公ファブリスはファウスタにほれ込んでしまい、サンセヴェリーナ公爵夫人(ジーナ)やマリエッタがそっちのけになってしまう(ここは、実際読んでいてもちょっと唐突というか取ってつけた感がある)。

 

M※※※伯爵(名前が表記されない)

ファウスタのパトロン。ファウスタが謎の男(正体はファブリス)に惚れこんでしまったのを聞いて激しい嫉妬心を燃やす。ただ、金の力に頼りきりで、いざ自分の力でとなるとからっきしであり、情けない役どころ。