みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

法廷遊戯

五十嵐律人『法廷遊戯』。

今度は映画化もされたんですかね。

本物の弁護士が書いたという推理小説ですが、読んだことはなかったのです。

今回初めて読んでみました。

 

 

けっこうシリアス系というか、それぞれの登場人物に影があるんですね。

 

 

(ネタバレ感想・いずれ消すかも)

これを言うのは野暮そのものであることは承知しつつ。

 

 

法廷のシーンで事前に検察に見せていない証拠を請求しているので、検察官の言うとおり、刑事訴訟法に普通なら引っかかるんですよね。

これは実務知らなくても刑事訴訟法の教科書とコンメンタールで理解できることで。

「やむを得ない事由に該当しないことや、伝聞証拠に該当することについて、留木は早口でまくしたてていった。それに対して僕は、必要最小限の反論をした」っていうけど、Aとの約束が事由に該当しないことは勿論、問題の映像が何月何日に作成されたデータなのかがわからないと、映像も音声もニセモノ、とか、映像自体は本物だけど音声はニセモノ、とか、そういう可能性もあるので…。

反論してる悪役Pのほうが正しくて、異議を撤回させてる側の、一見すると正義派のPは左遷もののミスだと思うのですが…、まあ、ドラマですからね。

筆者も法学部や法科大学院で学んだ以上は当然そこに気が付いているから、法学的には一番無理のある個所を、刑訴法をきちんと踏まえていることを作中の検事に言わせつつ主人公の「必要最小限の反論をした」で流しているんだと思います。

 

 

ここまで書くと作品をディスっているようですが、これは細部の話です。

 

一見たしからしく見える裁判の事実認定の危うさ、冤罪なんて遠い世界の話…ではなくて実はそこかしこに転がっているという重いテーマを推理小説という形で奇麗な文体で描いているこの作品は、世間にもっと知られていいと思いますし、映画化されるのも意義があることだと思います(超えらそう)。