みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

失われた時を求めて(抄訳版) その3

抄訳版『失われた時を求めて』も、ようやく3/3巻目に差し掛かりました。

実際の長さは文庫本にして全14巻(岩波文庫)なので、大部分が省略されてるはずですが、それでも長いですね。

 

 

前回、ヒロインことアルベルチーヌ・シモーネのイメージが難しいと書きました。

ここは、文学評論系の人は、プルーストが同性愛者だったから男性がモデルになっていると書きたがるわけです。実際そうだったのかもしれませんが、ただ、ど素人の僕が言うのもなんですが、プルーストの個人的事情を離れた作品としての読み方としては、それも何か違うのかなあと思うのです。

というのは、プルーストは作品中で同性愛者についてはそのまま書いてるわけで(シャルリュス男爵とか)、アルベルチーヌを作品中で女性として描いた以上、それは純然たる女性としてイメージするべきだし、そのモデルも女性から選ぶべき、と思うわけです。

前回書いた時よりも読み進むうちに、そう思うようになりました。

 

まあユング心理学でいうアニマ(女性性)というか…、理想の女性像にちょっとしたアニムス(男性性)の要素が加わってるくらいな感じですかね。まあ、ユング心理学もあまり知らないのでテキトーですが。

 

アルベルチーヌの容貌に関する描写はそんなに多くないので、以下の少ないヒントを参考に考えました。

 

・スポーツ好きで、時々明け透けな表現もする率直な性格

・ふっくらした頬、陽気な、そして幾分無遠慮な目つき(抄訳版1巻435頁)

・長い髪、巻き毛、褐色の髪(抄訳版1巻454頁)

・切れ長の青い目、目を閉じると、まるでカーテンを引いて海が見えなくなるような感じ(抄訳版3巻33頁)

 

一番最初の特徴(これは容貌というより性格ですが)が、作品的にはおそらく一番大事で、おそらくは、物語の前半部に登場する社交界の着飾った、貴族的で慎ましやかな女性達との対比だと思うのです。主人公も名家の出身で概ね貴族的な女性に囲まれて育ってきたところ、アルベルチーヌは新時代の活発な女性の象徴、みたいな位置づけで書かれている気がします。

 

完璧に当てはまるモデルはなかなか見つからなかったんですけど、現代の女性で2人ほど。

 

画像検索した中で一番イメージに近かったのが、この、チャールズ・ヒルドレスというカリフォルニアの写真家(褐色の髪の女性の写真が多いです)のトップページ、2021年5月5日現在で一番最初(パソコン画面では一番左)に表示される、草木の前で髪をかき上げている女性。

頬はそんなにふっくらしてないですが、長い褐色の髪と、涼し気な目つきが、文章から個人的に(勝手に)想像していたアルベルチーヌのイメージそのものでした。

 

チャールズ・ヒルドレスのホームページ

Headshots & Portraits by Hildreth Photography - The Photography of Charles Hildreth

 

 

「ふっくらした頬」の条件を重視するとオランダ人モデルのロミー・ストリド(Romee Strijd)が一番ハマる気がします。

 


www.youtube.com

 

 

20世紀の文学作品の女性のモデルを現代に求めても仕方ないんですが、イメージできたほうが何となく読みやすい気がしたので、暇人なことを考えてみました。