みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

天帝のみはるかす桜火

古野まほろ氏の「天帝」シリーズの、第0章という感じの短編集です。

まほろと峰葉実香との出会い、峰葉実香と修野まりとの出会い等々、シリーズ第1作『天帝のはしたなき果実』の前の出来事が描かれます。

表紙絵の少年が古野まほろ、トランペットを持っているのがメインヒロインの峰葉実香、自分の右手を見ているのが修野まり、かなと。

 

 

天帝シリーズの第6作『天帝のやどりなれ華館』は読んでない上での感想ですけど、やっぱりヒロイン勢3名(というか主人公の同級生女子、レギュラーキャラ)のうち、穴井戸栄子はあまり好きになれないです。いかにもおっさんの考えたエロ女子高生という感じで、下ネタどうこう以前にキャラ造形が薄っぺらい気がする。

 

あと2人は…。

作中最強キャラの修野まりはいかにも漫画・ラノベらしい設定の完璧女子高生です。超金持ち・文武両道の万能・範囲内にいる人の心を読める特殊能力持ち。これはこれで徹しきっていて面白いかなと。

メインヒロインの峰葉実香もかなり良いキャラクターだと思います。運動神経が鈍く手先の器用さもイマイチで趣味も悪い(なぜか厨二病全開の主人公まほろが好き)けど、事件が発生したときの知力と武力に関しては他のアクの強い面々に見劣りしないというあたりですね。

 

つまり、キャラクターとしての能力値は、まり(最強)>実香(そこそこ戦えるし判断力も良い)>まほろ(武力ゼロ。とっさの判断も鈍い) と並ぶ。

ただ、事件への集中力・探偵としての推理力という点では、まほろ(推理力は抜群)>実香(まほろにはかなわないが推理は上手い)>まり と並ぶ、という感じでしょうか。

修野まりはとにかく人間離れして「最強」なので、逆に、俗世のいざこざに対する関心も薄く、些細なヒントに目を付けて真相を暴くという作業にはあまり向かないというところでバランスが取れている感じですね。

日本帝国が続いている(けれども携帯や新幹線など生活は現代と同じ)という前提での世界線は斬新ですし、良い世界観だと思うのでシリーズ完結しないでほしいところもありますが、最近の古野まほろ氏はキャリアを活かした警察小説が多いので(元キャリア官僚のようです)なかなか難しいのかもしれません。