瀬在丸紅子が主人公のVシリーズ2作目『人形式モナリザ』。
かなり久しぶりに再読しました。
でも、やっぱりこれは、単体作品としては駄作だと思いますね(個人の見解ですが)。
ネット上の評判は意外と高かったりもするんだけど。
まずメイントリックに無理があり過ぎる。
「は?」という感じです。
物理的に無理じゃないのと思う上に偶然に頼り過ぎてる。
というか、それ以前に、事件(トリック)の舞台となる場所の見取り図とか何もないので、考える材料が少なすぎて、トリックを聞いても「そんなんわかるわけないじゃん」と思うわけですね。
これ、作者自身もトリックに自信なかったから見取り図とか付けなかったんじゃないかな。
あともう一つ大きな要因は瀬在丸紅子のキャラ崩壊というか、この話だと正直言って、トラブルメイカーというか、不快な女でしかないです。
まず不倫とか離婚にまつわるドロドロした「女の戦い」みたいなシーンが多い上に、紅子は率直な感情表現をせず、本心を出さない飾った言い回しが多いので、何か嫌味な性格に見えます。
しかも本筋と関係ないところで過剰にそういうシーンが多い。
そして紅子の行動も理解不能で、最も意味不明なのが単身でリスクあるところに乗り込んだシーン。話に変化を付けるためのご都合主義としか言いようがない。頭良い大人の女性というキャラのはずなのに行動がフワフワと直情的過ぎる。
しかもそれで周囲(特に刑事であり、離婚した元夫)に心配と迷惑をかけまくってるのに謝罪そっちのけで、元夫の現在の恋人(この不倫がきっかけで離婚した)と大人の恋のバトル。
いや、元夫に未練あるとしても、今回は元夫とその恋人の大事なデートを自分の軽率な行動で邪魔したんだから、さすがに全面謝罪しようよ、と思ってしまうところです。
そのくせ今度は紅子はなぜか終盤で保呂草に猛アプローチ。未練タラタラで元夫の逢瀬の邪魔しておいてそれはないだろうと。
やってることがとんでもなく自己中だし行動パターンが昼メロ(これも今じゃ通じない表現かも)なんだよなあ…と思う。
練無と紫子のあまり面白くないおちゃらけトークが拍車をかけてイライラが倍増します。
森博嗣先生は複雑な性格の女性のキャラクターを魅力的に書くのが、あまり上手くないと思うんですよね…。Vシリーズではそれが顕著に出てる気がする。
香久山紫子も、竹を割ったような性格ってところまではいいのに、あまり頭の良くなさそうな言い間違いでキャラ付けされてて、まともな活躍場面がほとんどないし。
と、あくまで個人の見解です、と断った上ですが、良いのはノベルス版の表紙だけです。