2020年の各社ミステリランキングで1位だった、辻真先『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』、遅ればせながら読んでみました。
推理部分は割と薄味だった気がする。
推理小説を論じるときにいつも言ってますが、見取り図が少ないのが残念でした。
特に第1事件は見取り図がもっとあればもっと(解決編の前に)推理できた気がします。ただ、第2事件のほうは着想的には、考えたこととそんなには違わなかった(負け惜しみ入ってますが)。
むしろこの作品の価値は、昭和24年という戦後復興期の、人々は粗野で貧窮してるけど活気だけはある、という時代を舞台にしながら、ライトノベルに寄せた現代風な書き方をしていて、良質なジュヴナイルになっていることですね。
辻真先先生は1932年生まれの御年89歳だそうですが、80代でこれだけ若く爽やかな文体で書けるのは本当に凄いと思います。