みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

神聖紀オデッセリアⅡ その7(全ネタバレあり)

さて、今回でラスト。最終章です。

 

西暦64年の世界から1192年の世界に時空転移してきたエルグ、イリア、タルカス。

サラディンの統治するアイユーブ朝イスラム王国と思われる都の近くに飛ばされます。

時はまさに第3回十字軍の真っただ中。

タルカスが持っていた十字架(西暦64年のローマ貧民街で迫害されていた住民からもらったものです)のせいで、十字軍と勘違いされたエルグたち一行。

一度は捕まりますが、イリアの機転でヨーロッパ側のリチャード王(イングランド)と和平交渉することになり、使者を買って出ることになります。

和平交渉の途上に立ちはだかるのは、すっかり人間不信になってしまった前章の主人公、マイヤー。しかし、マイヤーを暗殺しようとした敵(バイン司教の差し金)を倒したことで、マイヤーもエルグたちの仲間になります。

 

さて、ここからは、残念なことに、ストーリーがいきなりスカスカになります。

レイラが地上界に降りてきてエルグたち一行に世界各地の封印迷宮(玄武・青龍・白虎・朱雀)に向かうとともに、残りの竜神の封印を解くように告げます。四聖獣というと急にアジアのイメージになりますが、これは前作ストーリーからの継承です。

主人公たちは各地のダンジョンを巡り、ラハンから指し向けられる手下や、竜神を打倒していくわけです。

しかしラハンの手下のほうは「ホヤ」(海産物のホヤっぽい見た目)とか、デザイン的にも命名的にもだんだんやる気がなくなっていきます。

この各地を回る時、ガルーダに乗って世界中を飛び回るという設定にはなっているのですが、世界各地で新しく行ける場所はほとんどありません。きっと本当はもっと自由に世界各地を回れるようにする構想だったんだろうなあと思いますが。

 

最終的にはラハンによってすべての封印が破られ、エルグ達はオーストラリア大陸の南、ルルイエ(なぜかクトゥルフ要素。時代には全然合わない…)の地下にある封印の洞窟でついにラハンと決戦、倒します。

その後は、長いダンジョンの末に待つ、ラハンを操っていた黒幕を倒し、ゲームクリア。

 

これが『神聖紀オデッセリアⅡ』のストーリー。

終盤は、非常に簡素です。

たぶんもっといろいろ遊べるようにするはずだったんでしょうね。でも伏線が大きすぎて回収できなかったと見た。竜神より明らかに強いホヤとか、唐突なクトゥルフ要素とか、マイヤー編までの流れは何だったんだという感じで。

 

 

ラハンも、最終章では何だか平凡な終わり方になってます。

しかも意外と弱い。逃げ回っていたのも納得…というか、これはゲームバランスの問題ですが。

 

 

ここで、本作一番の敵役(黒幕ではないですが)であるラハンについて。

ラハンは、マイヤー編(前回記事)には、なぜか登場しません。マイヤー編の黒幕はバイン司教とフリードリヒ皇帝です。

 

ラハンはどこに行ったのか?

ここで、過去のストーリーを思い返す必要があります。

 

1.

ラハンは紀元前5世紀の世界で、エルグの生まれ故郷であるシオン王国を滅ぼしました。エルグは母親をはじめとするシオン王国の人々の仇を討つためにラハンを討つ旅に出たわけです。

神聖紀オデッセリアⅡ その3(全ネタバレあり) - みちのく砂丘Ⅱ

ちなみに「シオン」とは、現イスラエルエルサレム地方の歴史的地名です。

 

2.

そして、次に、ラハンは西暦64年の世界で、ローマの貧民街で徐々に信仰を広めていた、十字架をシンボルとし、神の救いが万人に平等に与えられることを教義とする信徒集団を、反乱分子として、暴君ネロへの差し金により根絶やしにしようとしています。

神聖紀オデッセリアⅡ その5(全ネタバレあり) - みちのく砂丘Ⅱ

その目論見はタルカスによって阻止されてしまうわけですが。

 

3.

上記1・2を見てくると、ラハンが、明らかに「ある宗教」とその「神」、その他の信仰の礎になるもの(聖地など)をつけ狙っていることがわかります。

ここで、マイヤー編に戻って考えてみると、なぜその宗教がつけ狙われることになるのかが、何となく見えてくると思います。十字軍もその宗教ですね。

 

前回記事

神聖紀オデッセリアⅡ その6(全ネタバレあり) - みちのく砂丘Ⅱ

 

読み返してみると、マイヤー編のストーリーで、一人、「ある宗教」とその「神」に対して強烈な怨みを抱くことになりそうな人物がいますね。

元々信じていなかったのではなくて、信じていたけど裏切られた感じの…。

 

その人物は「ある宗教」とその「神」に対して幻滅し、強烈すぎるまでに怨みと憎しみを高めていたところ、太古の時代、つまり前作『神聖紀オデッセリア』の時代のとある神(ラスボス)に目をつけられて、時空転移の力を与えられ、「ある宗教」とその「神」に対する復讐を果たすために時空を駆け回っていたわけです。

そして1192年の時代に戻ってきて、同じく時代を飛び越えて自分を追ってきたエルグたちと対決することになる、というのが最終章。

 

ラハンの物語は、このゲームのストーリーの最も非凡なところだと思います。

筋書き自体は珍しいものではないかもしれないけど、ファンタジー世界の出来事ではなくて世界史に絡めてきたのが秀逸。

だからこそ、ストーリーの見せ方にはもっとこだわるべきだったと思うし、黒幕がラハンを操っていた、という説明だけで終わってほしくなかったと思いますね。

つくづく惜しい。

 

 

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エンディング。

ビック東海さん、ぜひ『神聖紀オデッセリアⅢ』を(無理かな)。