推理作家にして評論家、笠井潔先生のデビュー作にして、名探偵〈矢吹駆〉シリーズの第1作です。1979年の『バイバイ、エンジェル』という作品。
冬、年末年始のパリを舞台にした事件なので今のシーズンにはぴったりかもしれません。電子書籍で購入可能です。
実は〈矢吹駆〉シリーズ第2作、『サマー・アポカリプス』の文庫版を先に古本屋で購入していたのですが、第2作の出だしで、予告なく第1作の犯人名をネタバレ、という、シリーズものを第1作から読まない読者に対しては容赦ない構成でしたので、第1作から読むことにしたのでした。
〈矢吹駆〉シリーズは、大学時代(個人的に最も推理小説を読んでいた時代)には読まなかったのですよ。
本屋で手にとってはみるものの、なんか文体が渋すぎるというか。
新本格ブームを生み出した綾辻幸人先生の『十角館の殺人』(1987年)よりも10年近く前の作品ですので、人物描写や文章の雰囲気とかが古風なのです。
大学時代は、それこそ西尾維新(これは何となく「先生」を付けないほうがそれらしいので~)の『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』みたいな、ラノベっぽくてわかりやすいほうが好きではあったので、読まないままでした。
でも、年の功というか、四十路に入って、逆にこういう古風なほうが読みやすいと思うようになりました。昔なら矢吹駆の哲学的なセリフとかも全部読み飛ばしてたと思うので。
内容としては、密室やアリバイが出てくるきちんとした本格推理小説で、「お、真相読めたかも」と思うと、意外と作者の罠にはまっているかもしれない、という感じです。現場の図面がしっかりしているのはポイント高い。
今年読んだ推理小説では『ヨルガオ殺人事件』『ストーンサークルの殺人』に引けを取らないくらい面白かったです。
そして、これでようやく第2作『サマー・アポカリプス』が読めます。