飛鳥部勝則先生のデビュー作にして第9回鮎川哲也賞受賞作品『殉教カテリナ車輪』。前の記事に書いた市立図書館で読みました。
鮎川哲也賞は、講談社のメフィスト賞に対抗して東京創元社がスタートさせた推理小説新人賞ですね。
全部読んだわけではないですが、メフィスト賞がときに独創性や型破りなもの(変格もの)を重視するのに対して、鮎川哲也賞は古式ゆかしい本格推理をベースにした選考が多いように思います。この賞の後輩格としては青崎有吾『体育館の殺人』(第23回受賞)や今村昌弘『屍人荘の殺人』(第27回受賞)などがあります。
ジャンルとしては新本格ミステリです。
ただ、飛鳥部勝則先生の他の作品と同じく、本の冒頭カラーページに謎めいた絵が掲示されており、絵に隠された謎を解くという要素があります。
読んでみての感想ですが。
まあ、本格推理としては今一つ、という感じではあります。説明されれば分かるけど、インパクトは薄め。絵の解釈についても、何かそんな物凄い謎が隠されてるという感じでもなかったですし。
駄作でもないですけどね(偉そう)。
気になったのは、私は先に同作者の『バベル消滅』を読んでいるんですが、話の引き出しのパターンが比較的似ている、というか、田舎住まいの美術好きのおっさんがミステリアス(不思議ちゃん)な女子高生or女子大生に出会って何か触発されて何か事件に巻き込まれるという構成が割と似てますね。
同時にその辺から、緊張感のある絵解き要素が弱まって普通の推理小説になっちゃってる気もする。
この辺の引き出しの少なさが後の『誰のための綾織』盗作騒動(そのために『誰のための綾織』だけ数万円のプレミアになってますが)に繋がってる気がして、せっかく良い賞をとれたのに諸行無常だなという感じもします。