みちのく砂丘Ⅱ

仕事と関係ないことについて書きます。

オルノーコ&美しい浮気女

夏目漱石の『三四郎』にアフラ・ベーンという作家の話題が出てくるシーンがあります(広田先生の自宅の掃除で、三四郎と美禰子が初めてまともに会話を交わし、知り合いになるシーン)。

アフラ・ベーン(1640~1689)は17世紀、女性初の職業作家(紫式部は職業作家ではないので…ただ、女性作家としては世界初じゃないかな)です。

 

その作家の作品が、なんと岩波文庫(赤-海外文学)にありました。岩波文庫はさすが網羅している範囲が広い。

集英社や新潮社も海外文学はありますけど、割とメジャー作品が多い。光文社が最近古典新訳文庫で頑張ってますけど。

 

 

で、読んでみた感想ですけど、なんだろう、なんかまだ、「近代文学」とは遠く隔たった何かですね。英雄譚のようで、単なる好事家的な残酷物語のようで。

細かい心理描写とかは近代文学の特徴なので、この時はまだそういうのはないです。

まあ17世紀で、大航海時代から絶対王政期、まだ産業革命や市民革命なんて先の話の時代ですからね。

しかし勧善懲悪ですらないというか、どっちも、特に悪いことしてないはずの人がひどい目に遭いまくる話で、悪役もそんなに天誅を食らったりするわけでもなく、当時はこれがウケたんだろうか。

『オルノーコ』は奴隷差別が当然の時代に、奴隷にされた、元アフリカの王族の激動と悲劇の人生を描いた物語です。

書いてる作家自身が奴隷制が空気のように当然の時代の人なので仕方ないですけど、なんかもうちょっと救いのあるラストはないのかと。

でもまあ、近代文学や現代文学の先進性を理解するためにはこういうのも必要かなと、そんな感想でした。