実は今まで読んだことありませんでした。
夏目漱石の『坑夫』。
華やかだけどやや通俗的で勧善懲悪な『虞美人草』と、華やかさの中に後期漱石文学に繋がるテーマが混じってくる『三四郎』の間の作品です。
華やかさが微塵もない、鉱山での労働がテーマで、夏目漱石の作品の中でも特に異色作と言われています。
当時の、文明開化の社会からはぐれた下層・周縁の過酷な部分社会を、少し幻想めいた筆致で描いている感じです。
主人公は、そういった社会になじみのない青年でしたが、とある事件をきっかけに上流・中流から放遂されてきたことで、何かどうでもよくなって鉱山で働くことになるわけです。
逆境や沈んだ気分の時に読むとちょうどいいかもしれません。