エラリイ・クイーンの国名シリーズ、全9作品中の第7作『シャム双生児の秘密』です。
創元推理文庫の新訳版はまだ出版されていないみたいなので(期待はしていますが)、ハヤカワ・ミステリ版を電子書籍で読みました。
シャム、つまりベトナム付近を舞台にした物語なのかと思いきやそうではなく、カナダ旅行の帰りのドライブ中に山火事に見舞われたエラリイ父子が、火事の難を逃れて山奥の謎めいた館を訪れるところから話が始まります。
シリーズの他作品とは全くティストが違うというか、怪奇幻想小説風味が強いです。
最後まで読み終えて、結局これはどこまで現実なのか、全部夢だったのではないか(と作中で名探偵エラリイ・クイーン自身も述懐している)、そんな不思議な感じですね。
謎解き部分に関してはロジックがあまりにも細かすぎてちょっと、という感じもしましたが、緊張感のある雰囲気は他に類を見ないというか、ミステリの古典とは思えないくらい映画的でした。